『接触回数』と『接触時間』、大切なのはどっち?
「こねくりまわしたサービス」はヒットしない
まず、自分のスタンスを明らかにしておくと、「ヒットするサービスと、面白いサービスは違う」というのは、「売れているものは面白くない」と翻訳されてしまうリスクを孕んでいると思うのですが、僕は、そうは思っていないです。
たとえば、「お笑い芸人」なんかは顕著で、売れている芸人さんはすべからく面白いです。
どれだけ御託を並べようが、どれだけ立場がある人であろうが、「笑いが起きなかったらアウト」という、誰にでも判断できるジャッジポイントがあるので、そこはもう間違いない。
「いやいや、あの芸人、そんなに面白くないけど」と思う人がいるかもしれませんが、テレビ局側や劇場側に「面白くない芸人を起用するメリット」なんて一つもないわけで、よくよく見てみると、その芸人さんが「パス」を出していたり、「リアクター」になっていることで、笑いのキッカケを作っていたり、あるいは、笑いを大きくしていたり、とにもかくにも必ず「笑い」がそこに絡んでいる。
売れ続けている芸人さんは本当に面白いなぁと思います。
あと、漫画でいうと『ドラゴンボール』は面白いし、『スラムダンク』も面白いし、『呪術廻戦』も面白いし、映画でも『君の名は。』は面白いし、『パイレーツ・オブ・カリビアン』も面白い。
中学生の頃は「フランス映画が好き」とか言ってたのですが、当時、それは完全に嘘で、ポジションを獲得するための好みで、僕、売れているもの、結構、好きです。
なので、今日の話は「売れているものはダメだ。売れていないものにこそ本質がある」みたいな話ではありません。
その上で、『ヒットするサービスと、面白いサービスは違う』という話なのですが、僕、どういうわけか事業の相談というか、意見を求められる機会が多くて、「僕なんかに相談して大丈夫なのかな?」と思いつつも、求められたからには、正直にお答えしているんですけど、
なんか「面白いサービス」をやろうとする人が多いんです。
嫌な言い方をすると「こねくりまわしたサービス」です。
「これが、こうなって、ここで、こうなった時に、こういう運動が発生するので、このタイミングでマネタイズをして…」みたいな「伏線回収系の小説」のようなやつです。
そりゃ、やるからには「面白いサービス」をやりたくなるのは、僕も痛いほど分かるのですが、僕自身、「結果的にココとココが繋がって、鬼バズりした」みたいな経験はあっても、最初から二発目のパンチや三発目のパンチを用意していて、それが見事に打てた試しって、ほとんどないんですね。
「3連コンボが決まってから、それをまた再現できるように、環境を整える」ということが多いです。
僕がシャレで作ったサービスの中だと、一番面白いのが『レターポット』かなぁと思うのですが、「お金と言葉って性質が似てるよね」というところからスタートしているサービスなので、サービスというよりも、もはや表現活動に近い。
なんかもう「説明込みで面白い」というものなので、こういうものはヒットはしないですよね。
(続きはこちらから【連載「革命のファンファーレ~現代の労働と報酬」】)
【西野亮廣】意外にみんなわかっていない!?「ヒットするサービスと、面白いサービスは違う」──連載「革命のファンファーレ2」Vol.33
https://goetheweb.jp/person/article/20220311-nishino_akihiro_33