共感には比較対象が必要

2026年08月03日

書いた人:西野 亮廣 公式LINE

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https://voicy.jp/channel/941/8074333

共感には比較対象が必要 | 西野亮廣(キングコング)「西野さんの朝礼」/ Voicy - 音声プラットフォーム

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「違い」を比較できて初めて、挑戦の価値を理解できる

 
最近の僕は『河口湖 音楽と森の美術館』の運営、正確には「事業再生」にかなりの時間を使っています。
 
必然的に発信内容も美術館の話題が多くなっているのですが、冷静に考えてみると、美術館を運営している人の数なんて、日本全国でもせいぜい数百〜千人程度でしょう。
 
その中で僕の発信を追いかけてくださっている方となると、おそらく数人いるかどうかです。
 
その数人にとっては、「その発想は面白い」「なるほど、そう組み立てるのか」と刺さっているかもしれませんが、大多数の方にとっては、自分とは関係のない話に映るでしょう。
 
ただ、考えてみれば、これまで僕が発信してきた「芸人としての生き残り方」や「本の届け方」だって、誰もが当事者だったわけではありません。
 
それでも一定数の方に興味を持っていただけたのは、そこに「比較対象」があったからだと思うのです。
 
たとえば、絵本『えんとつ町のプペル』を無料公開した時には、「絵本はこう売るものだ」という世の中の共通認識がありました。
 
その既存のセオリーに対して、まったく異なるアプローチを取ったからこそ、「面白い」という反応も、「けしからん」という反応も生まれた。
 
賛否はともかく、「従来との違い」が誰の目にも分かったわけです。
 
一方で、美術館の経営については、「一般的にはこう運営する」というイメージを発信している人がほとんどいません。
 
比較対象が存在しないため、僕がやっていることが革新的なのか、それとも当たり前の改善なのか、その判断材料を持っている人が少ないのです。
 
たとえば、為替を考えてみます。
 
現在は1ドル約160円です。
 
『河口湖 音楽と森の美術館』の入館料は1800円なので、アメリカからのお客様にとっては約11ドルで入館できます。
 
しかし、1ドル100円だった時代には、同じ1800円でも、アメリカからのお客様は18ドルを支払っていたことになります。
 
日本人の入館料は変わっていないにもかかわらず、アメリカから見れば、同じ体験が実質7ドルも安くなっている。
 
これは、日本のサービスが為替によって意図せず値下げされている状態です。
 
だとすれば、「外国人料金を設定する」という話ではなく、「体験価値を同じ価格で提供する」という考え方から、アメリカからのお客様には18ドル相当…現在のレートで約2800円をお支払いいただく設計も十分に合理的です。
 
さらに言えば、その判定を自己申告ではなく、クレジットカードの発行国などと連動させて、自動的に価
を調整できる仕組みをつくれば、日本のサービスが為替だけを理由に過度なディスカウント状態になることも防げます。
 
たとえば今、このようなことを日々考え、試行錯誤を繰り返しています。
 
しかし、この議論に共感し、一緒に面白がってくださる方は決して多くありません。
 
なぜなら、「美術館経営の常識」が広く共有されていないからです。
 
実は、これはブロードウェイに挑戦していた時にも同じことを感じました。
 
人は「違い」を比較できて初めて、その挑戦の価値や面白さを理解できます。
 
どうやら「共感」には比較対象が必要みたいです。
 
 

既得権益の先にしか「既得権益」はない

 
問題は、「共感を得るために、あえて比較対象が存在する市場へ行くべきなのか」ということです。
 
これはあくまで僕の肌感覚なので、話半分で聞いていただきたいのですが、この5〜6年で、多くの人が「競争の作法」を身につけたように感じています。
 
たとえば、「アルゴリズムをどう攻略するか」「SNSでどう露出を最大化するか」「再生回数をどう伸ばすか」といった、競争に勝つための技術や知識は、以前とは比べものにならないほど共有されるようになりました。
 
つまり、競争そのもののレベルが上がったのです。
 
そうした環境で、あえて皆と同じ競技場に立つことが、本当に最適解なのか。
 
僕は少し疑問に思っています。
 
もちろん、比較対象がある市場では、自分の違いが伝わりやすく、共感も得やすいというメリットがあります。
 
しかしその一方で、競争相手も同じように最適化を繰り返しているため、得られるリターンは以前よりも小さくなっています。
 
さらに厄介なのは、一度ポジションを獲得しても、それを守り続けるためのコストが年々高くなっていることです。
 
以前は一度トップに立てば優位性を維持できましたが、今は常にアルゴリズムや市場環境が変化し、新しい競合が現れるため、防衛戦を続けなければならない。
 
競争が成熟すればするほど、「勝つこと」よりも「勝ち続けること」のほうが難しくなるわけです。
 
最近は「競争の先には競争しかない」と口癖のように言っておりますが、今もやっぱりそれは思っておりまして、なので「共感」を捨てて、「競争のない市場」に行き、皆がノーマークの状態のうちに城を築く、気がついたら「既得権益」になっていた…みたいな選択肢も持っておいていいかもしれません。
 
競争の先に「既得権益」はなく、既得権益を取りに行った先にしか「既得権益」がないということがここ最近わかってきました。
 
参考までに。
 
 
【お知らせ】
8月8日(土)と9日(日)に、兵庫県川西市で『映画 えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』の上映会&舞台挨拶があります。
川西市の子供達は入場無料です。
是非、遊びにいらしてください。
 
出演:キングコング西野亮廣
会場:川西市キセラホール
チケットはコチラから→https://chimney-ticket.jp/event/group/3b0d21df-b159-4149-9531-cb9698f8db28/8d87d8ec-15ff-43ad-badb-7b8a2e7bcd09
 
 

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