時代が変わった日

2023年11月11日

書いた人:西野 亮廣 公式LINE

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大阪万博が色々と大変そう… | 西野亮廣(キングコング)「西野さんの朝礼」/ Voicy - 音声プラットフォーム

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誤解され続けているクラウドファンディング

 
絵本『えんとつ町のプペル』のクラウドファンディングは、「絵本の制作費を集める企画」と「発売記念イベント(個展)の開催費用を集める企画」で、二度実施しました。
 
分業制で作る絵本のビジュアルが明らかになったタイミングで仕掛けた二度目の挑戦は特に注目を集め、二度のクラウドファンディングの合計支援者数は9550人。合計支援額は5650万円。
 
これまでほとんど相手にされてこなかった僕の絵本プロジェクトは、ここにきて、そろそろ事件が起きそうな気配を漂わせはじめました。
 
 
ところで、クラウドファンディングは今も尚、誤解されています。
 
よくあるクラウドファンディング批判の決まり文句に、「自分の金でやれよ」がありますが、あれは間違いです。
 
一般的なクラウドファンディングは、「購入型」です。
 
たしかに「支援」という言葉は使われているのですが、購入型のクラウドファンディングには「3000円ご支援いただければ、絵本『えんとつ町のプペル』にサインを入れてお送りします」といったリターン(返礼品)が必ず存在します。
 
つまるところ、「予約販売」です。
 
アーティストがチケットを先行販売して、前もっていただいたお金でライブを運営するように、〝予約販売で発生したお金を元手に商品を制作&お届けしているので〟「自分の金でやれよも何も……」というのが、クラウドファンディングを知る人の本音です。
 
ちなみに、「先にお金を振り込んでいただいてから商品を届けるのがアウト」というのであれば「メルカリ」もアウトです。
 
皮肉にも新型コロナウイルスが時代を前に進めてくれたおかげで、今はクラウドファンディングに対する理解が随分進みましたが、当時は、このような「知識不足からくる誹謗中傷」がたくさんありました。
 
それによって中止に追い込まれた挑戦もたくさんありました。
 
悔しかっただろうな。
 
無知な善人の正義感はいつも始末が悪く、時代を遅らせる。
 
 
クラウドファンディングから学んだことは本当にたくさんあります。
 
中でも、クラウドファンディングというものが「資金調達の手段」ではなくて、「共犯者づくりの手段」ということを知れたことは、後の活動に大きな影響をもたらしました。
 
先ほども申し上げましたが、購入型のクラウドファンディングには「リターン(返礼品)」が存在します。
 
「3000円ご支援いただければ、絵本『えんとつ町のプペル』にサインを入れてお送りします」というものです。
 
「絵本をお送りします」とサクッと言っちゃっていますが、どっこい、支援者様にお送りする絵本には当然「原価」が発生します。
 
そこに「配送費」がかかってきて、場合によっては配送を手伝ってくれるスタッフを雇わなければなりませんし、クラウドファンディングの「手数料」も支払わなければなりません。
 
となると、残るお金は雀の涙ほど。
 
下手すりゃ収支がマイナスになることも。
 
「クラウドファンディングをしておいて、収支がマイナスになるとは何事か?」と思われるかもしれませんが、これがクラウドファンディングです。
 
それでもやるメリットがあるからやっているのですが、それを知るには、「支援総額」ではなくて、「支援者数」に目を向ける必要があります。
 
 
たとえば。
 
僕と貴方と2人で力を合わせて絵本を作れば、その絵本は最低でも2冊売れます。自分の作品を手元に残しておきたい僕と貴方が一冊ずつ買うからです(笑)。
 
2人で作った絵本が二冊売れるのであれば、10人で作れば十冊、100人で作れば百冊、千人で作れば千冊が売れるハズ。
 
要するに、「お客さん」を増やすのではなくて、「作り手」を増やしてしまえばいい。
 
「作り手」はそのまま「お客さん」になってくれるからです。
 
クラウドファンディングの最大の魅力は、商品・サービスを世間にリリースする前から「結果的にお客さんになる作り手(共犯者)」が作れる点にあります。
 
このことに気がついた日から、大きな大きな時代の変化がチラチラと目に入ってくるようになりました。
 
 

レストラン型からBBQ型へ

 
この時期、他でもクラウドファンディングの企画を走らせていたのですが、少し前から薄っすらと感じていた「時代の変化」が、徐々に確信へと変わっていきます。
 
「お客さんが、発信したがっている」
 
これまでのエンターテイメント(サービス)は、「発信者」と「受信者」が明確に分かれていました。
 
これまでのお客さんは、できるだけ高品質の商品を、なるべく低価格で求めていたのですが、クラウドファンディングをs繰り返しているうちに、どうやら最近は、そうとも言い切れない。
 
試しに、僕のイベントのチケットを、値段の安い順から「B席」「A席」「S席」「スタッフになれる権」で販売してみたところ、最も値段が高い「スタッフになれる権」が一番最初に売り切れました。
 
その後、何度も試しましたが、何度やっても、やっぱり「スタッフになれる権」が一番最初に売り切れます。
 
どうやらお客さんは発信したがっている。しかも「お金を払ってまで」。
 
理由は、まず間違いなくSNSでしょう。
 
皆、「いいね」が欲しいし、「フォロワー数」を増やしたい。
 
こうなってくると、「○○のイベントに行ってきました」というツイートよりも、「○○のイベントは私が作りました」というツイートが欲しくなってきます。
 
 
2014年頃。
 
時代は、プロが作ったものをお客さんにお出しする「レストラン型」から、お客さんが食べたいものをお客さんが作る「BBQ型」へとジワジワと移動し始めていました。
 
時代がプロに求めている仕事は、発信したがっているお客さんの横に寄り添う「サポート役」で、当時、この重大な変化に気が付いている(受け止められている)プレイヤーはいませんでした。
 
世間的には、まだまだプロの役割は「発信する人」で、「制作段階からお客さんを巻き込む」なんてもっての他。
 
あいかわらず、「情報解禁日」を設け、「受信者」と「発信者」をキッチリと分けています。
 
そして、そのことに誰も疑問を抱いていませんでした。
 
この時、僕は初めて思いました。
 
「あ。時代を取れるかも」
 
 

あの時、もっとやれることがあったのかなぁ。

 
それから、自分が仕掛けている様々なエンタメを「BBQ型」へ作り直してみることにしました。
 
「情報解禁日」を無くして、「著作権」を曖昧にして、講演会を自分で主催することを止め、クラウドファンディングのリターンで「西野亮廣講演会を開催できる権」を出しました。
 
「お客さんが講演会を主催して、お客さんがお客さんを呼ぶ」という建て付けです。
 
事務作業ができる権利をお客さんに販売することはしませんが、「発信しがいがある仕事の参加券」は積極的に販売しました。
 
東京タワーやエッフェル塔で開催する個展の設営スタッフなどです。
 
誰もいない夜のエッフェル塔で、お客さん(オンラインサロンメンバー)と共に個展会場の設営ができたのは今もイイ思い出です。
 
設営の途中に、酔っ払いがエッフェル塔の鉄骨を登り始めて、エッフェル塔は一時封鎖。100名近い警察が駆けつける騒ぎとなりました。
 
搬入作業を2時間近く止められてしまった僕らは、エッフェル塔の展望室からパリの街を眺め、「この調子だと、明日は早朝から作業をしないと間に合わないね」と笑いました。
 
楽しかったな。
 
それもこれも「制作段階からお客さんを巻き込む」と決めたから生まれたエンタメで、それらは全て、絵本『えんとつ町のプペル』のクラウドファンディングで学んだことを転用させたものばかり。
 
絵本『えんとつ町のプペル』のクラウドファンディングは僕の表現活動の在り方を根本からひっくり返りました。
 
 
その後、「作品作りに携わりたい」「イベント運営に携わりたい」という声は止まないどころか、日に日に大きくなっていきました。
 
その一方で、(とくに年輩者から)「お客さんにお金を払わせて、お客さんに働かせるとは何事だ!」という批判も根強く残ります。
 
「やりがい搾取だ」と言う人もいました。
 
イフルエンサーは、オシャレなカフェに通い、オシャレな洋服を着ます。人気YouTuberは、配信設備を整えて、開封動画用の商品を購入します。
 
InstagramやYouTubeが一般化した今、「お金をかけて発信をする」という考えは「そりゃ、必要経費だよね」と考えられるようになり、市民権を得ました。
 
しかし、今から6〜7年前は、まだまだ世間に理解されるものではありませんでした。
 
「あの日、日本中から批判されたアクションが、今のスタンダードになっている」という経験を、これまで何度も経験してきました。
 
その様子を、いつも一番近くで見ていた梶原君から、「あれだけ批判してきた人達が、今になって、手のひらを返していることに対しての憤りはないのか?」と質問されたことがありました。
 
たしかに、当時、何度も腹を立てたのは事実です。
 
ただ、今思うとそれは、批判してきたことに対してではなく、「どうして話を聞いてくれないんだ」という、自分の声が届かないことに対する憤りだったように思います。
 
時代の転換期でした。
 
YouTubeがスタートし、世間の目がYouTuberに向き始めました。
 
若者の家にテレビは無く、皆、テレビ番組をスマホで見始めました。
 
スマホの小さな画面に映ることができる人数には限界があり、登場人物の多い番組は内容関係なく、「見づらい」ものになっていました。
 
そんな中、「『ひな段』は画面面積の問題で、必ず手詰まりになるから…」と呼びかけても、「芸人やったら、『ひな段』で勝負せいや」の一点張り。
 
「広告費を軸に活動している以上、どこまでいっても、主導権を握れないし、広告費が落ちてくると手詰まりになるから、今のうちに、クラウドファンディングをやって、ダイレクト課金をいただける身体になっておいた方が…」と呼びかけても、「宗教かよ」と嘲笑されて終わり。
 
「大きな津波が来てるから、皆、一旦、丘の上に逃げよう」と何度も何度も避難を呼びかけましたが、誰にも取り合ってもらえませんでした。
 
まもなく大津波が街を襲います。
 
丘の上に逃げたのは自分だけ。
 
僕は丘の上から、大好きなあの人や、あの人が、津波に飲まれて、流されていくのをただ見るしかありません。
 
ずっと、その繰り返しです。
 
「テレビで通用しないから」「舞台で通用しないから」と、たくさんの芸人が辞めていきました。
 
ちょっと待ってくれ。たまたま肌が合わなかっただけかもしれないじゃないか。テレビと舞台が全てじゃない。
 
今はYouTubeもある。クラウドファンディングでお金を集めれば、自分の仕事を作ることもできる。
 
「お願いだから、一度だけ話を聞いてくれ」と何度も思いました。
 
はじめてクラウドファンディングをやった日から5年が経った頃、「クラウドファンディングのプラットフォームを自社で持って、その中で、芸人一人一人が仕事を作れるようにした方がいい」と吉本興業に打診をして、ようやく話が通り、吉本興業発のクラウドファンディング『SILKHAT』を立ち上げました。
 
新型コロナウイルスで、芸人の全ての活動が断たれてしまった時、この『SILKHAT』内でウン百件の仕事が生まれ、多くの芸人から感謝されました。
 
その一連の流れ見ていた梶原君からすると、「クラウドファンディングをやる西野のコト、あれだけを否定しておいて…」と、思うところがあったみたいです。(優しいね)
 
手のひらを返されることなんて、声が届かない痛みに比べたら安いもんです。
 
あの日、僕がもう少し上手く説明できていれば、津波に流されていく仲間を見なくて済んだのかなぁと思うことがあります。
 
 
西野 亮廣『ゴミ人間 ~日本中から笑われた夢がある~』より抜粋
https://amzn.asia/d/0Qrvplv
 
 

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