短編映画の歩き方

2026年07月29日

書いた人:西野 亮廣 公式LINE

(※今日の記事を音声で楽しみたい方はコチラ↓)
https://voicy.jp/channel/941/8052672

短編映画の歩き方 | 西野亮廣(キングコング)「西野さんの朝礼」/ Voicy - 音声プラットフォーム

https://voicy.jp/channel/941/8052672

 
 

美術館という空間は、展示からショップまでを含めて1つの体験

 
昨日に引き続き、『河口湖 音楽と森の美術館』の現在地について、もう少し踏み込んだお話をさせてください。
 
現在、『河口湖 音楽と森の美術館』の運営を、少しずつ引き継がせていただいています。
 
まず着手したのは、財務とオペレーションの見直しです。
 
持続可能な経営体制を築くことを最優先に据え、最初の二カ月間は、とにかく現場を走り回りながら改善を重ねてきました。
 
その過程で、エンターテインメントを生業とする立場から、いくつか気になった点がありました。
 
たとえば、ミュージアムショップに並ぶ商品のラインナップには明確な設計思想が見えず、展示コンテンツとショップとの間にも物語の導線が十分につくられていませんでした。
 
展示とは何の関係もないコスメが並んでいたりして、「なぜここにあるのだろう?」と来館者が感じてしまう状態です。
 
美術館という空間は、展示からショップまでを含めて1つの体験です。
 
だからこそ、「展示を見て心が動き、その余韻のまま商品と出会う」という流れを丁寧に設計し直しています。
 
 

人件費を必要としない「展示コンテンツ」で空間価値を高めることが重要

 
その一方で、新たなコンテンツを2つ加える準備も進めています。 
 
昨日と今日の2日間、スタッフは時間との勝負を繰り広げながら設営に取り組んでくれました。
 
1つ目は、CHIMNEY TOWNの最新インスタレーション(空間アート)『千年砦』です。
 
これは、美術館の倉庫や廊下の片隅に眠っていた歴史的価値のあるオルゴールを一堂に集めた展示です。
 
それぞれが異なる時代を生き抜き、多くの時間を内包した存在です。その「時間が守られた場所」という意味を込めて、『千年砦』と名付けました。
 
ちなみに『千年砦』は、『映画 えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』に登場する異世界の名前でもあるのですが、その世界観やコンセプトやビジュアルが近いことから、同じ名前を与えました。
 
そして、もう1つが、ミュージアムショップの一角に誕生する『ボトルジョージシアター』です。
 
この美術館を初めて歩いた時、僕が最も強く感じた違和感は、「展示コンテンツの量に対して、おみやげコーナーがあまりにも広い」ということでした。
 
商品数を少し絞り、その分、見るもの・読むものを増やしたいと考えたのですが、そこでパフォーマーを常駐させて空間を埋めようとすると、人件費が積み上がり、長期的には経営を圧迫してしまいます。
 
だからこそ、美術館らしく、人件費を必要としない「展示コンテンツ」で空間価値を高めることが重要だと判断したのですが、「そんな都合のいい展示があるのか?」という話になります。
 
 

「完成した後、どう届けるのか」という課題

 
実は、この問いに対する答えは2年ほど前から準備していました。
 
それが、僕が「短編映画の出口の答え」と呼んでいた構想です。
 
現在も世界中で数え切れないほどの短編映画が制作されていますが、その多くは「完成した後、どう届けるのか」という課題を解決できていません。
 
映画館で上映しても、わずか10分ほどの作品のためだけに劇場へ足を運ぶ人は多くありません。
 
オンラインに公開しても、膨大なコンテンツの中に埋もれてしまう。
 
結果として、アカデミー賞を受賞した作品でさえ、多くの人に観てもらえる場所を持てないことがあります。
 
つまり、短編映画はクリエイターの「名刺」としては機能しても、それ以上の商業的な価値を生み出す出口を持てていない。
 
この課題に対する1つの答えとして取り組んだのが、『ボトルジョージ』でした。
 
世界各地の映画祭で評価をいただいた後、スタッフには「DVD化もしない。Blu-ray化もしない。配信もしない」と伝えました。
 
一般的には機会損失に見える判断ですが、僕には考えがありました。
 
考えたのは、「映画」として売るのではなく、「展示作品」として生かすことです。
 
短編映画を映画館ではなく、美術館に展示する。
 
そうすれば、美術館に人が訪れ続ける限り、その作品は観られ続けます。
 
つまり、作品のカテゴリーを変えることで、寿命そのものを延ばすことができる。
 
しかも、この方法は長編映画では成立しません。
 
10分前後だからこそ、館内を歩きながら気軽に鑑賞でき、美術館という場所の展示作品として機能するのです。
 
 

目先の小さな成果を手放してでも、未来の大きな価値を育てる。

 
そんな経緯を経て、明日、『ボトルジョージシアター』がプレオープンします。
 
美術館の入館チケットをお持ちの方であれば、追加料金なしで何度でもご覧いただけます。
 
これによって、「美術館へ行く理由」が増え、「もう1度訪れる理由」も生まれます。
 
作品そのものが、美術館の満足度を高め、結果として施設全体の価値と売上を押し上げる資産として機能し始めるわけです。
 
ここでのポイントは、『ボトルジョージ』という作品が、公開から2年を経て、ようやく回収を始めたことです。
 
もし、あの時点で焦ってDVDや配信へ展開していたら、今回の選択肢は存在しませんでした。
 
以前Voicyでもお話ししましたが、未来は「どの点とどの点が、いつ結ばれるか」が分かりません。
 
だからこそ、短期的な利益を急いで取りにいくよりも、未来の可能性を消さない選択を積み重ねることが重要です。
 
目先の小さな成果を手放してでも、未来の大きな価値を育てる。
 
今回の取り組みが、その考え方を共有する1つの実例になれば嬉しく思います。
 
 
【お知らせ】
8月8日(土)と9日(日)に、兵庫県川西市で『映画 えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』の上映会&舞台挨拶があります。
 
川西市の子供達は入場無料です。
 
是非、遊びにいらしてください。
 
出演:キングコング西野亮廣
会場:川西市キセラホール
チケットはコチラから→https://chimney-ticket.jp/event/group/3b0d21df-b159-4149-9531-cb9698f8db28/8d87d8ec-15ff-43ad-badb-7b8a2e7bcd09
 
 

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