クリエイティブに必要なのは「締切」
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「一人の熱狂」をキチンと入れる | 西野亮廣(キングコング)「西野さんの朝礼」/ Voicy - 音声プラットフォーム
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ミュージカル『えんとつ町のプペル』って、ちょっと変わった作り方をしておりまして…
昨日は夜22時頃から打ち合わせが1本ありました。
ミュージカル『えんとつ町のプペル』のアメリカ版のスタッフさんとのZOOM打ち合わせで(だからこんな時間)、昨日はオープニング曲の「歌詞」と「メロディー」を詰めていく作業でした。
ミュージカル『えんとつ町のプペル』って、ちょっと変わった作り方をしておりまして…まず僕が脚本を書くんですね。
そして、途中で入ってくる歌で「それぞれ伝えて欲しい内容(情報)」を箇条書きにします。
そこから、作詞と作曲の作業が入るんですけども、日本語の歌詞で曲を作ってしまうと、日本のリズムになっちゃうので、そこから先は、アメリカのスタッフが作詞と作曲をするんです。
日本公演の場合は、それを日本語に訳すという感じで“一往復”する感じです。
やり方をいろいろ探ってみた結果そうなったわけではなく、ミュージカル『えんとつ町のプペル』は最初からアメリカでやる予定だったので(※コロナでスケジュールが大幅に変わった)、音楽スタッフの座組が元々そうだったんですね。
そんなこんなで、歌詞は「英語の歌詞」がベースになるわけですが、たとえば「Waiting in the dark」とかって、僕らには意味が分からないじゃないですか?
直訳すると「暗闇が来るのを待つ」とか「暗闇で待ち合わせ」とかだと思うんですけど、おそらく本当のニュアンスはそうじゃないですよね?
特に、前後の言葉でまた大きく変わってくる。
それを1つずつ作詞家に聞いていくんです。
「これは、どういう意味なんだ?」と。
そうすると、「何も考えずに、何も伺わずに、ただ敷かれたレールの上だけを歩く人生を…こう表現してみた」と教えてくれるわけですね。
「そういった表現の1つ1つが、原作のメッセージからズレていないか?」を1つ1つチェックしていくんです。
そして、それがもう凄い量なんです。
で、こういうことをしなかったら、どうなるか?というと、まぁまぁ事故るんです。
どれだけ優秀なスタッフが集まっていても、文化の違いがあるので、丸投げしちゃうと、とんでもない魔改造をされたりします。
相手に「やる気」があれば、尚のこと。
僕らも過去にそれで痛い目に遭ったことがあるので、とにかく時間を確保して、向こうのスタッフと過ごす時間を増やして、何度も何度も価値観を共有して、そしてクリエイティブは、こまめにチェックするようにしています。
もう一度言いますが、これがもう気が遠くなるような仕事量なんですけども…先日、「そんなことを言ってられないな」という感じで、僕の背筋を伸ばしてくれる話を聞きました。
宮本さんが1つ1つに魂を入れ続けたから、「これぞスーパーマリオ」が出来上がった
今、世界中でヒットしている映画『スーパーマリオ』のことなんですけども、あの作品の日本語版は翻訳者にヨーロッパ企画の上田誠さんが入られているんです。
ヨーロッパ企画さんとはコロナ禍に舞台でご一緒させていただく予定だったんですけども、「初日を迎える二日前(最終稽古あたりで)にコロナの影響で全公演中止になる」という強烈な経験をしまして、そこから今でもお互いの作品を見合っこして、そして、時々呑みに行かせてもらったりしています。
僕の大大大好きな劇団です。
そのヨーロッパ企画の上田さんが映画『スーパーマリオ』の日本語訳を担当されたわけですが、上田さんが教えてくださった話が(短いですが)本当に最高で、聞けば、映画『スーパーマリオ』って、あんなに大きな企画なのに、スーパーマリオの生みの親である宮本茂さんが、細々と全部チェックして指示を出されていたそうで、上田さん曰く「エンタメはひとりの超人から作られるのだなぁ」と。
もちろんチームで作ってはいるのですが、「優秀なスタッフを集めて、あとは丸投げ」みたいなことはしなかったそうで、仕事を任せられるスタッフに仕事を任せつつも、ずっと隣で伴走されたそうです。
なんか、「手を動かすリーダーは一流じゃない」みたいな風潮ってあるじゃないですか?
実際、そういう側面もあると思うんです。
「リーダーが手を動かしている間は、チームがリーダー依存の体質になって、現場が育たない」みたいな。
リーダーが手を動かすことのデメリットというのは確実にあると思うのですが、それは「時と場合による」というのが今回の話で、映画『スーパーマリオ』でいうと、宮本さんが1つ1つに魂を入れ続けたから、「これぞスーパーマリオ」が出来上がったというのもある。
今、尾田栄一郎さんが実写版『ワンピース』の制作に「エグゼクティブプロデューサー」としてガッツリ関わっているらしいんですけども、あれも「生みの親にしかできない仕事」があるんだと思います。
あそこに「口を出さない美学」なんて無くて、あるのは徹底的な執着・作品愛だけ。
宮本さんの話を聞いた時に、「ここにはここの正義がある」と背筋が伸びました。
「時と場合による」というところなので、実際、すごく難しい
さっきも言いましたが「時と場合による」というところなので、実際、すごく難しいことだと思います。
きっと宮本さんの中にも「ここまで口を挟んでいいのだろうか?」という葛藤はあったと思います。
一般的なリーダー論からは外れた行為なので。
だけど、やっぱり「作品」を生み出すには必要なアクションなのかもしれません。
現在、ニューヨークで制作中のミュージカル『えんとつ町のプペル』は、来月、キャスト&スタッフが一堂に会するテストがあって、来年の頭には投資家を集めて、お披露目公演をおこないます。
スタッフ一同、手探りで頑張ってます。
応援宜しくお願いします。
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