フランスで『プペル』のタイトルが変わる理由

2022年07月20日

書いた人:西野 亮廣 公式LINE

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フランスで『プペル』のタイトルが変わる理由 | 西野亮廣(キングコング)「西野さんの朝礼」/ Voicy - 音声プラットフォーム

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今日は「フランスで『プペル』のタイトルが変わる理由」というテーマでお話ししたいと思います。
 
 

エンタメ世界戦は「バックボーンが違う」のがハードル
 

昨日、「世界にうって出るならば『共感』ではなく、『創造』だ」みたいな話をさせていただきましたが、オンラインサロンの方でも、そのことについて、もう少し詳しく、もう少しエグくお話しさせていただきました。
 
とにもかくにも、ことエンタメにおいては、国内戦と世界戦では戦い方が全然違って、国内戦の延長に世界戦があるわけじゃないんですね。
 
日本にいると、「さらにスケールの大きなものが、自分の活動の延長線上にない」という経験をあまりしない。
 
僕は、兵庫県川西市で生まれ、「川西のお調子者」として育って、そこから大阪に出て、吉本に入って、その後、東京でおこなわれている全国大会に出たわけですが、その間やったことといえば、カッコ良く言うと「芸を磨く」ということと、「大阪と東京(全国)にチューニングする」ということぐらい。
 
兵庫も大阪も東京も、使っている言語は大体同じだし、道徳観や、あとは「結婚式ではキリストに愛を誓って、クリスマスはサンタクロースで、初詣は神様に手を合わせて、節分では鬼に豆を投げて、葬式では坊さんにお経を読んでもらう」という特殊すぎる宗教観も同じなので、生まれたままの姿で頑張っていれば全国大会までは駒を進めることができる。
 
だけど、まったく違う文化に飛び込んだことがないし、まったく違う文化の人が集まっている場所の「地雷」の存在を知らないし、自分達の当たり前が、「差別」になっていることも知らないので、そこから先には進めない。
 
そこから先は、生きる上での「お作法」がまったく違ってくるんですね。
 
「言語」のハードルも多少あるのですが、それよりも、「バックボーンが違う」というハードルですね。
 
これが本当に大変っ。
 
「長編アニメ」なんかを作っていると、尚更。
 
 
だから、やっぱり現地に行って、同じ釜の飯を食って、彼らが何に飢えていて、彼らが何に怒っているのか?を肌で感じなきゃいけない。
 
時々、そんなことをしなくても、ポーンっと軽く飛び越えてしまえる人もいらっしゃいますが、僕は頭が悪いので、「ああ、こういうことか」と腹落ちするまでには、時間が必要です。
 
 

フランス公開時のタイトルは「空の向こう側」

 
そんな中、『映画 えんとつ町のプペル』のフランス公開が決定しました。
 
厳密に言うと、フランスの公開は、かなり前から決まっていたのですが、コロナで延期延期になって、ようやく来月(8月17日)に公開が決まりました。
 
 
さて、話はここからです。
 
『えんとつ町のプペル』って、大体どの国に言っても『Poupelle of Chimney Town』なのですが、フランスだけは『De l’autre côté du ciel(ドゥ ルート クーテ デュ シエル)』なんです。
 
直訳すると「空の向こう側」です。
 
プペルは、フランスだと「空の向こう側」というタイトルになるんです。
 
もともと「プペル」の名前の由来は、フランスの「セーヌ」の知事だった「ウジューヌ・ルネ・プベル」さんで、彼の名前をもじって、「プペル」にしました。
 
「Poubelle」の真ん中の「b」をクルンっとひっくり返して、「Poupelle」にしたんです。
 
この「ウジューヌ・ルネ・プベル」さんというのは、彼が県知事だった1884年3月に、パリの建物のすべての所有者にゴミ箱の設置を義務づけた人です。
 
当時のパリの衛生環境は酷くて、ほっておくと、ゴミを漁るネズミとかが街中を走り回って、いろんな感染症が蔓延しちゃう…という状況だったんです。
 
そこでプベルさんが「ちゃんと蓋のついたイイ感じのゴミ箱を設置しようよ!」と言って、それをキッカケにパリの衛生環境が飛躍的に改善されて、メチャクチャ綺麗になったんです。
 
そこから、設置を義務付けられたゴミ箱(容器)が「プベル」と呼ばれるようになったんです。
 
新体操の技に人の名前が付いちゃう感じで、ゴミ箱に人の名前が付いちゃったんです。
 
なので、フランスでは「ゴミ箱」のことを「プベル」と呼んでいるものですから、『えんとつ町のプペル』というタイトルは、彼らからすると「えんとつ町のゴミパコ」みたいな感じで、なんか「甘噛み」してる雰囲気なんでしょうね。
 
あと、「タイトルに『ゴミ箱』が入っていると、ドキドキしない」というのもあるのでしょう。
 
 

海を越える時は「文化への理解」が本当に大事

 
そんなこんなで、フランスのスタッフさんから、「『De l’autre côté du ciel(ドゥ ルート クーテ デュ シエル)』(空の向こう側)というタイトルでいきませんか?」と言われて、「まぁ、そりゃそうだよね」となりました。
 
これにしたって、フランスのゴミ箱の歴史を知っていたら、納得感がありますが、知らなかったら「なんで、タイトルを変えちゃうんだよ」となるじゃないですか?
 
「プペルはプペルなんだよ!」と(笑)
 
逆のパターンで言うと、たとえば『アナと雪の女王』て、英語タイトルは『Frozen』なのですが、日本の「フローズン」のイメージって、ちょっと「氷感」強めじゃないですか?
 
ファミリーファンタジーというよりも、かなり、シビアなイメージがある。
なかなか、家族で「フローズン、観にいこう」とはなりにくそう。
 
やっぱ、『アナと雪の女王』ですよね。
細かいことを言うと、『雪の女王』だけでもダメだったと思うんです。
 
『雪の女王』だと、4文字中、漢字が3文字入っていて、まだシビアです。
 
やっぱ、『アナと雪の女王』ですよね。
「カタカナ」が欲しいです。
 
それもこれも、日本人が「雪」や「女王」や「フローズン」に持っているイメージと、英語圏の方が持っているイメージが違うからだと思うのですが、このタイトル一つで、興行収入は何十億、何百億違ってくると思います。
 
この感じを捉えるのって、メチャクチャ難しくないですか?
 
「Frozen」を直訳すると「凍った」みたいなことだと思うのですが、今の話って、直訳じゃ測ることができません。
 
まとめると、海を越える時というのは、「文化への理解」が本当に大事になってくる…という話でした。
 

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