「契約・交渉」ができない日本人

2024年01月23日

書いた人:西野 亮廣 公式LINE

(※今日の記事を音声で楽しみたい方はコチラ↓)
https://voicy.jp/channel/941/711621

契約と交渉が苦手な日本人 | 西野亮廣(キングコング)「西野さんの朝礼」/ Voicy - 音声プラットフォーム

https://voicy.jp/channel/941/711621

 
 

「アメリカは契約社会」とよく聞きますが、本当にその通り

 
去年の11月から(途中2回の帰国を挟んで)ニューヨーク・ブロードウェイで働いているわけですが、ようやく一段落つきそうなので、ここらで僕の頭の中と、そして、これから頑張る日本の皆様に向けたメッセージを整理したいと思います。
 
過去の放送に出てきたお話もチョイチョイ挟むので、復習がてら聴いてください。
 
今回僕はミュージカル『えんとつ町のプペル』の原作・脚本・演出としてプロジェクトに参加しているのですが、同時に「リードプロデューサー」というポジションにも就いています。
 
制作の進捗管理やら、契約ウンヌンカンヌン、資金調達など…どうやら面倒くさそうな仕事をする人のうちの一人です。
 
(他にもエグゼクティブプロデューサーや、プロデューサーや、アソシエイトプロデューサーという人達がいます)
 
そういうポジションに就いているから、余計に強く思い知らされるのかもしれませんが、日本人がブロードウェイで働く時に目の当たりにする“日本とアメリカ(ブロードウェイ)の大きな大きな違い”は、「契約」のリテラシーと、「お金」のリテラシーです。
 
「アメリカは契約社会」とよく聞きますが、本当にその通りで、特にブロードウェイには色んなバックボーンを持った人が集まっているので、口約束だと必ずトラブルに発展してしまいます。
 
なので、やっぱり「契約」は大事で、「交渉」が大事なんです。
 
アメリカの教育体系は「自己主張」や「コミュニケーションのスキル」を重視していて、学生はディベートやプレゼンテーションを通じて交渉スキルを磨く機会が多くあったりしますが、日本にはそれが無い。
 
基本的には、自分の身の安全(権利)は交渉で勝ち取らなきゃいけない世界線において、ここの教育の違いは大きく出ちゃう…というのが一点。
 
 

「お金の話をするなんて、下品だ」と言っている人は…

 
次に、思い知らされるのが日米の「お金リテラシー」の違いです。
 
ブロードウェイでミュージカルを作ろうと思ったら、まず最初に「投資家」を集めなきゃいけないので、“投資家の観点”を持っておかなきゃいけない。
 
たとえば、今回のような投資家向けのプレゼン公演をやる時には、ブロードウェイでは、衣装さんであろうと、作曲家さんであろうと、誰であろうも、皆、「投資家はこういうことを好まないor投資家はこういうことを好む」みたいな話をするんです。
 
これは、日本のクリエイティブの現場では見られない光景です。
 
僕がよく言っていますが、日本のアンチがときどき口にする「いつまで『えんとつ町のプペル』をこすっとんねん」という意見からは、完全に「投資家目線」が抜け落ちています。
 
投資家的には「いつまでもこすれる作品の方がリターンが大きい(回収期間が長い)」ので、たとえば、僕らがブロードウェイの関係者と話す時には、「2016年に出た絵本で、2023年には幕張メッセで、同タイトルのイベントをおこないました」という打ち出し方をしたりします。
 
要するに、「絵本の発売から7年が経っても、まだ万人規模のお客さんが入っていますよ」「一過性の人気作品じゃないですよ」というアピールで、ここがよくウケます。
 
お金リテラシーに関していえば「投資家目線が抜け落ちている」というのもそうですが、そもそも問題として、ブロードウェイで戦おうと思ったら、かなりまとまったお金(まとまったお金を集める技術)が必要なんです。
 
生々しい話をすると、投資家を集めようと思ったら、「この人が参加する作品です」と打ち出す為に名のあるクリエイターを集めなきゃいけないわけですが、もちろん、名のあるクリエイターさんって高いんですね。
 
基本的には、投資家さんに出していただいたお金から、名のあるクリエイターさんのギャランティーが支払われるわけですが、投資家さんからお金を出していただくには、名のあるクリエイターがプロジェクトに参加する確約がとれている必要があって、それにはどうするかというと、「手付金」みたいなのを先にお支払いするんです。
 
クリエイターさんのギャラが仮に1000万円だとしたら、先に、200万円ぐらいをお支払いするんです。
 
それによって「この人が参加します」と投資家さんにお話しすることができるようになる。
 
つまり、「お金を引っ張ってくる為のお金が必要」というエゲツないゲームで、「お金の話をするなんて、下品だ」と言っている人は、このゲームには一生参加できない。
 
僕も吉本興業の養成所出身の人間なのですが、日本の芸能事務所の養成所や、クリエイターを育てる専門学校では、ここの部分(お金教育)をキチンと教育のプログラムに入れた方がいいと思います。
 
 
「契約・交渉」と「お金」のことを目の当たりにする度に、日本人のクリエイターが、たったこんなこと(学べばクリアできること)でチャンスを失っているのは本当に勿体無いなぁと思います。
 
なので、今後も、こんな発信を続けていきたいと思います。
 
一家に一冊、西野亮廣の『夢と金』を置いといてください。
 
 
『夢と金』(西野亮廣)
https://www.amazon.co.jp/dp/4344040503?tag=chimneytown-22
 
 

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