ブロードウェイプロデューサー達の安全策

2024年01月22日

書いた人:西野 亮廣 公式LINE

(※今日の記事を音声で楽しみたい方はコチラ↓)
https://voicy.jp/channel/941/710777

ブロードウェイのプロデューサーの安全策 | 西野亮廣(キングコング)「西野さんの朝礼」/ Voicy - 音声プラットフォーム

https://voicy.jp/channel/941/710777

 
 

ブロードウェイ戦は一発勝負

 
先日、ミュージカル『えんとつ町のプペル』のプレゼン公演が大盛況のうちに幕を閉じたのですが、実はまだニューヨークにおります。
 
プレゼン公演が終わった翌日の正午から、今後の進め方についてのミーティングがゴリゴリに入っておりまして、このミーティングでザックリではありますが向こう2年間のスケジュールが決まりました。
 
ここから分かるとおり、とにかく時間がかかる勝負だし、時間をかけなきゃいけない勝負なんです。
 
僕が吉本興業を退所した時の理由が「マネージャーがコロコロ変わってしまうから」だったのは、まさにここで、世界戦は半年や1年で決着がつく勝負じゃないし、人間関係や信念や火事場の馬鹿力みたいなものだけは引き継ぎができない(特に海外チームとのコミュニケーションは複雑で、「半年に一回ペースで担当変わります」となると信用問題に関わってくる)ので、長期スパンで動けるチームが必要だったりします。
 
「時間をかけなきゃいけない勝負」というのは、どういうことかというと、基本、チャンスは一回なんです。
 
「ブロードウェイでやります!」と発表した時には、ブロードウェイ関係者的にも、こっちのメディア的にも「あの作品がついに!」的な空気になってなきゃいけなくて、その為には、何度も何度も「顔見せ」をして、業界内に作品のファンを作っておかなきゃいけないので、やっぱりそこは一朝一夕ではいかないわけです。
 
「顔見せに1年間かけましょう」という世界線で、「名刺くばり」にウン億円かかっちゃうイメージです。
 
とんでもないですよね(笑)
 
今日はその話の延長になるのですが、そういう環境にあるブロードウェイ村の人達の考え方が実に面白いし、規模は違えど、これは僕らの生活にも落とし込める普遍的な話なので、共有しておきます。
 
繰り返しますが、ブロードウェイ戦は一発勝負なんですね。
 
たくさんのお金が動くので、失敗すると一気に信用を失ってしまって、基本的にはセカンドチャンスは無いです。
 
ここで「たくさんのお金」と言われても、相場がまったく見えないと思うので参考までにいうと、ミュージカル『えんとつ町のプペル』をブロードウェイで作ることになったら、その製作費は「大体18〜20億円ぐらいだよね」という話になっています。
 
これだけのお金を投資家さんから集めるわけです。
 
ちなみに僕が一部出しても良いのなら、人生経験として僕も出そうと思っています。
 
ブロードウェイ作品に出資する機会って、そうそう無さそうなので。
 
とにかく、これだけ大きなお金が動いて、かつ、スタープレイヤーのスケジュールもいただくことになるわけです。
 
スタープレイヤーのスケジュールって、基本、奪い合いになるので、スタープレイヤーとしても、参加する作品が後世に名を残す作品になってくれた方が嬉しいわけで…まぁ、言ってしまったら、「俺の貴重な時間を奪っているわけですから、下手なことはしないでくれよ」なんです。
 
#本人はそんなことは一言も言っていません
 
 
だから、ブロードウェイは一発勝負なんです。
 
 

「上手くいかないパターン」を早い段階でたくさん出しておく

 
その一発勝負のブロードウェイ戦の裏側では、一体どんなミーティングがおこなわれているかというのが今日の本題なんですけども、メチャクチャ端的に言うと「今のうちに失敗しとけ」です。
 
「20億集めてから、スタープレイヤーを集めてからの失敗は絶対に許されないので、とにかく今のうちに、『上手くいかないパターン』をできるだけ多く出せ」です。
 
この考え方自体は別に日本でもあると思うんです。
 
「練習の段階で失敗しとけ」という。
 
でも、僕らの感覚として、準備段階とはいえ、失敗したら「畜生」と思うじゃないですか?
 
「あー、うまくいかない!!」って。
 
今回のプレゼン公演にしたって、全部が全部上手くいったわけじゃなくて、上手くいかなかったこともいくつかあったんです。
 
その『上手くいかなかったこと』に対して、ブロードウェイのプロデューサーチームは、「畜生」という気持ちよりも、「良し良し」という気持ちの方が大きくて、なんか皆やたらニヤニヤしているんです。
 
まるで成功したような顔をしているのですが、20億円というお金や、ブロードウェイ村での信用のことを考えると、この段階での失敗というのは成功で、その顔は間違っていない。
 
ここから僕らが受け取った方がいいメッセージは「『失敗を恐れて動かない』ということがいかに危険か?」ということ。
 
ぶっちゃけ今の僕らができる失敗なんて、たかが知れていて、問題は、先々で大きな出番を貰った時の僕らで、そこでの失敗は致命傷に繋がる可能性がある。
 
なので、「上手くいかないパターンをなるべく早い段階でたくさん出しておく」という安全策をとった方がいいかもね…というお話でした。 
 
 

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