冬眠のススメ

2023年10月13日

書いた人:西野 亮廣 公式LINE

(※今日の記事を音声で楽しみたい方はコチラ↓)
https://voicy.jp/channel/941/634066

キンコン西野、『ラヴィット』(TBS)で完全にやらかす… | 西野亮廣(キングコング)「西野さんの朝礼」/ Voicy - 音声プラットフォーム

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「今じゃないよね」という判断

 
今日はインフルエンサー(「情報発信でご飯を食べている人」あるいは「情報発信を副業にしている人」)に向けた内容なので、そこに該当しない方は「へー、そんなこともあるんだね〜」と聞き流していただくとして、一方で、該当する人も鵜呑みにはしないでください。
 
「ちなみに西野亮廣はこんな感じでやってます」という話です。参考までに。
 
「本が売れない時代」と叫ばれて久しいですが、僕がこれまでに出したビジネス書(『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ』『バカと付き合うな』『新世界』『ゴミ人間』『夢と金』)は本当にありがたいことに全て(最低でも)「10万部」を超えていて、最近出した『夢と金』も20万部を突破していて、どうやらヒットメーカーなんです。
 
一作目の『魔法のコンパス』を出したのが2016年ですから、もう7年前。
 
そう考えると、「最近流行ってる人」という感じのヒットメーカーではなくて、信頼と実績のヒットメーカーです。
 
そんな男ですから、やはり出版のお話というのはチョコチョコいただくのですが、「今じゃないよね」という判断をすることが結構あります。
 
今日は、その話なんですけども…
 
ビジネス書に限らず、僕は、19歳の頃から何かしらの発信を続けてきたのですが、そんなことを20年以上やっているうちに、「流れ」や「風」というのが鮮明に見えてくるようになりました。
 
そこから、「今は前に出た方がいいな」とか「今は下がった方がいいな」という判断をしています。
 
たとえば僕の話をすると、「2000年代前半」は自分のターンだったように思います。
 
この時期はバットを振れば当たる…みたいな状況だったのですが、「2000年代後半」になると明らかに自分のターンじゃなくなって、ここでは何をやっても(時代に迎合しにいっても)無駄でした。
 
次に自分のターンがまわってきたのは2016年でしょうか。
 
この時は周りのスタッフさんにも「あ。僕の番が回ってきました」と言ったぐらい、いろんな歯車が噛み合っていて、絵本『えんとつ町のプペル』を出したのも、この直後です。
 
そこから3〜4年ぐらいは自分のターンだったのですが、今度はコロナ前あたりでしょうか、「ビジネス書を出しませんか?」というお話をいただいたのですが、「そろそろ僕のターンじゃないと思います」と言って、お断りしたんです。
 
それでも、コロナ1年目までは、まだ良かったのですが、コロナ2年目に入ると明らかに僕の言葉は世間から待たれていなくて、皆、身も心もやられてるから「頑張ろう」みたいな言葉は聞きたくなかったように思います。
 
コロナによって、頑張りたくても頑張れない状況だったし、頑張っても無駄にされてしまったので。
 
新R25さんとかが「ビジネス芸人オワコン説」を説き出したのも、このあたりで、「諦め」や「嘲笑」や「破壊」の風が吹いていました。
 
ガーシーさんが出てきたのも、この時期ですね。
 
今年、『夢と金』というビジネス書を出したのですが、聞けば僕がビジネス書を出すのは「3年半ぶり」だったそうです。
 
このタイミングになった理由は、何かに追い込まれて出したわけでも、幻冬舎の見城さんに脅されて出したわけでもありません。
 
「前に出るのは今だよね」となったから出しました。
 
コロナ禍で「頑張っても無駄だから」などの嘲笑系が流行ったのですが、結局、コロナが明けて、そういう人達が軒並み倒れて、「やっぱり、当たり前だけど頑張らなきゃいけないよね」という風が吹き出したので、「今ですね」となって、そのタイミングでスポ根漫画たる『夢と金』を出したら20万部突破のヒットとなりました。
 
根拠は「西野の肌感」になってしまうのですが、全く同じ内容であっても、10ヶ月前に『夢と金』を出していれば、売上は半分以下だったと思います。
 
それぐらい「タイミング」というのは大事で、それぐらい「流れ」というのは大きい。
 
 

次にターンが回ってくるまで待つ

 
では、「風が吹いてない」と判断した2000年代後半や、「ここから、しばらく風が吹かない」と判断したコロナ前&コロナ中。
 
自分はどんな手を打ったか?というと、1ミリも対策なんてしなくて、やったことは「次にターンが回ってくるまで待つ」ということを覚悟しただけなんです。
 
これはタモリさんの教えをそのままやっているだけなんですけど、タモリさんからは「時代は、時計の針のように回ってくるから、針を追わずに、その場にいろ」と言われたんです。
 
これは同時に、「その場にいることを決めたら、また針がどっかに行ってしまう」ということでもあるのですが、「それすらも受け入れて、次に回ってくるまで、待て」ということだと思います。
 
僕、もう随分長いこと芸能の世界にいますが、時代を追って、追いつき続けられる人って、ほとんどいないんです。
 
Voicyまわりでいうと、幻冬舎の箕輪さんとか。
 
箕輪さんって、コロナ前は「死ぬ時以外はかすり傷」というオラオラ本を出して、コロナ後は「かすり傷も痛かった」という、弱い人に寄り添うような本を出しているのですが、彼は、そこの切り替えに嘘がないんです。
 
当然、ご本人は世の中のニーズを把握されていますが、それより何より、箕輪さん本人が、時代のスピードと同じスピードで変化している。
 
そういう人は時代の波に乗り続けることができると思うのですが、それは天才の所業なので、あまり再現性は無いように思います。
 
ほとんどの人は、そこまで軽やかなギアチェンジ(変化)はできない。
 
にも関わらず、「発信し続けなきゃ忘れられる」みたいな呪縛から、時代に合わせて、自分の型を崩してしまって、結果、「無味無臭のインフルエンサーに仕上がってしまう」という事故がそこそこ起きているのを見かけます。
 
型が崩れて、無味無臭の何かになってしまうと、今度は時代の針も回ってこないので…
 
自分の型を崩さない為にも、「風が吹いていない時は覚悟をもって冬眠する」みたいな選択肢を持っていてもいいような気がしていて、その為には「発信を止めても、生活が困窮しない状況を作っておく」といった冬眠の備えが必要なのかなぁと思います。
 
自分の中で「まぁ、今じゃないか」と思ったり、「今は蓄えておくか」という判断ができるようになってから、いろんなことが好転するようになったので、話半分で、参考にしてみてください。
 
今日は「冬眠のススメ」でした。
 
 

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