マーケターと経営者の違い

2026年10月01日

書いた人:西野 亮廣 公式LINE

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マーケターと経営者の違い | 西野亮廣(キングコング)「西野さんの朝礼」/ Voicy - 音声プラットフォーム

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「数字を作る人」と「数字を背負う人」

 
「マーケター」と「経営者」は、どちらも数字を扱う仕事です。
 
売上、来場者数、顧客満足度、広告効果、認知度……。
 
マーケター(コンサルタント)は、数字を見ながら「何を改善すれば成果が出るのか」を考えます。
 
もちろん、経営者も数字を見ます。
 
ただ、この両者には大きな違いがあります。
 
その違いというのは、「数字を作る人」と「数字を背負う人」です。
 
たとえば、ある施設が「営業利益で初の黒字化に成功しました」と発表したとします。
 
これだけ聞くと、「黒字化したんだ。すごい」と受け取る人は少なくありません。
 
ところが、その数字が「減価償却前営業利益」だった場合、話は少し変わってきます。
 
たとえば、100億円を投じて施設をつくり、それを10年間で償却するとします。
 
単純化すれば、年間10億円の減価償却費が発生します。
 
そこで、営業活動によって8億円の利益が出たとしても、「償却前営業利益」では+8億円。
 
しかし、そこから減価償却費10億円を差し引けば、「営業利益」はマイナス2億円です。
 
つまり、「償却前では黒字」だけれど、「償却後では赤字」ということは、普通に起こり得ます。
 
もちろん、償却前営業利益にも意味があります。
 
減価償却は、その年に現金が10億円出ていくという意味ではありません。
 
すでに行った設備投資を、会計上、耐用年数に応じて費用として配分しているものだからです。
 
だから、償却前の数字を見ることで、「現在の営業活動そのものが、どれくらいの収益力を持っているのか」を見ることはできる。
 
問題は、その数字だけを見て、「事業が黒字化した」と理解してしまうことです。
 
経営者は、そこでは終われません。
 
100億円を投じたのであれば、「その100億円は、最終的にいくらの利益を生むのか?」まで考えなければならない。
 
さらに、金利はどうするのか。
税金はどうするのか。
設備の修繕費はどうするのか。
数年後の追加投資はどうするのか。
借入金はどう返すのか。
手元のキャッシュは足りるのか。
そして、投じた資本に対して、十分なリターンを生んでいるのか。
 
経営者は、こうした数字から逃げることができない。
 
 

都合の悪い数字まで見る覚悟

 
僕は、マーケターやコンサルタントが数字を「盛る」と言いたいわけではありません。
 
むしろ、優秀なマーケターやコンサルタントほど、数字を正確に扱います。
 
ただし、仕事の構造が違う。
 
マーケターやコンサルタントは、「この施策によって、この数字を改善しました」と成果を提示することができます。
 
一方、経営者は、「その結果、会社全体としてどうなったのか」まで問われます。
 
たとえば、
「来場者数が増えました」は成果です。
「顧客満足度が上がりました」も成果です。
「SNSのエンゲージメントが上がりました」も成果でしょう。
「売上が過去最高になりました」も、もちろん成果です。
 
ただし、それらを積み上げた結果、会社が儲かっていないのであれば、経営者はそこで立ち止まらなければいけない。
 
逆に、顧客満足度を上げるために人員を大量投入し、その結果として満足度が上がったとしても、その運営コストによって会社が持続できなくなれば、経営としては別の問題が発生します。
 
つまり、経営者にとっては、「どの数字が良くなったか」ではなく、「すべての数字を合わせた結果、事業が持続可能なのか」が重要になる。
 
PLだけではありません。
BSもある。
キャッシュフローもある。
借入もある。
人件費もある。
契約もある。
将来の設備投資もある。
社員の離脱もある。
 
経営者は、これらを全部引き受けなきゃいけない。
 
マーケターは「このKPIを改善しました」と言える。
コンサルタントは「この課題を解決しました」と言える。
 
でも経営者は、「それで会社はどうなったの?」という問いからは逃げられない。
 
売上が伸びた。
来場者が増えた。
満足度が上がった。
ブランド価値が向上した。
営業利益が黒字になった。
 
……それらはすべて大切です。
 
でも、経営者にとっては、それら一つひとつが「最終回答」じゃありません。
 
むしろ、そこからが本番です。
 
「その数字をつくるために、いくら使ったのか」
「その数字は、来年も維持できるのか」
「投じた資本に対して、十分なリターンがあるのか」
「会社に現金はいくら残っているのか」
「この事業は、5年後、10年後も続けられるのか」
 
そこまで見て、初めて経営です。
 
なので、経営者に必要なのは、「都合のいい数字を見つける能力ではなく、都合の悪い数字まで見る覚悟」です。
 
経営者という仕事の厳しさは、そこにあります。
 
数字は、いくらでも切り取れる。
でも、会社の現実は切り取れません。
 
最終的には、売上も、利益も、キャッシュも、借入も、人件費も、投資も、顧客も、従業員も、全部つながっている。
 
その全部を引き受けて、会社を守るのが経営者です。
 
経営者は、数字の発表者ではありません。
 
数字の当事者です。
 
そして、その数字の先にいる人たちの生活まで背負っている。
 
そこが、マーケターやコンサルタントと経営者の、大きな違いなのだと思います。
 
 

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