米アカデミー賞ショートリストに選出された作品の共通点

2025年01月14日

書いた人:西野 亮廣 公式LINE

(※今日の記事を音声で楽しみたい方はコチラ↓)
https://voicy.jp/channel/941/6349620

米アカデミー賞のノミネート候補にはどんな作品が並んでいるの? | 西野亮廣(キングコング)「西野さんの朝礼」/ Voicy - 音声プラットフォーム

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勝ち組は、ハードワークを最初に選ぶ

 
「勝ち組」「負け組」という言い方はあまり好きではないのですが、「なんとなく上手くいっている人」と「どうにもこうにも上手くいっていない人」は実際にいて、便宜上、それを「勝ち組」「負け組」という言い方をさせていただくと、「勝ち組は、ハードワークを最初に選んで、負け組は、ハードワークで勝ち切った勝ち組が老後に選ぶライフワークバランスを最初に選ぶ」というのが僕の中でありまして…今日は、ちょっとそれに関連するお話でございます。
 
米アカデミー賞ノミネートの発表が6日後に迫ってまいりました。
 
M-1グランプリでいうと「最終決戦の3組が決まる(アカデミー賞の場合は5作品)」というのが今週の日曜日です。
 
選ばれなかった時の傷を浅くする為にも(「ざまあ」の声を減らす為にも)本当はあまりこういった発信はしたくないのですが、ただ、だからといって、「ノミネートされた時だけ『皆さん、ご報告でーす』と大々的に宣伝して、ノミネートされなかったら、『そもそもそんなに狙っていませんでしたよ』みたいな顔でやり過ごす」という自己保身に走るヤツを誰が応援するでしょうか。
 
「成功した時だけ事後報告する」というヤツを誰が応援するでしょうか。
 
そんなことをしたところで皆さんにとって米アカデミー賞は(ボトルジョージの行方は)「他人事」のままなので、みっともないですが「願っています」「期待しちゃっています」という本音をこまめに発信し、覚悟をもって煽っています。
 
せっかくの機会なので、皆さんと一緒に喜びや悔しさを分かち合いたいと思います。
 
 

共通点と呼べそうなものは「圧倒的な量の投下」

 
さて。
 
そんな米アカデミー賞ですが、現在、短編映画部門は「実写」や「アニメ」ともに候補作品が15本ずつに絞られています。
 
今回のニューヨークの試写会では『ボトルジョージ』以外の5本を観させていただいたのですが、「一体、どんな感じの作品がアカデミー賞のショートリストに入っているのか?」「共通点はあるの?」みたいなところは皆さんも少しだけ気になるところだと思うので、今日はそんな話をさせていただきます。
 
2024年に各国の映画祭で話題になった作品ばかりなので、本当にどの作品も素晴らしく、あの手この手で個性もバラバラなのですが、1つ「共通点」と呼べそうなものがあって…それは「圧倒的な量を投下している」ということです。
 
短編映画を作る機会が自分に回ってきた時のことを想像していただきたいのですが、「短編だったら、ワンチャン、アイデア勝負(設定勝負)でなんとかなるかも」と考えちゃいませんか?
 
でも、「設定勝負だ」みたいなところは短編映画を作る人、全員が考えているんです。
 
つまり、「設定」だけで勝負してしまうと、埋もれちゃうんですよね。
 
一気に何本も見なきゃいけない審査員からすると「斬新な設定だね」という感想はお腹いっぱいなんです。
 
なので、「面白い設定」というのは、あくまで「ドレスコード(出場チケット)」のようなもので、勝負の決め手にはなっていないことが多いです。
 
では「何によって唸らされるか?」という話なんですけども、これが「作品を生み出す為に投下した量」で、たとえば今回のアカデミー賞の短編部門(実写)だと、空軍の協力を得て撮影している作品がショートリストに入っていたりするんです。
 
基地で撮影しているし、戦闘機もバンバン飛ばしてるんです。
 
戦闘機を飛ばすのって、トムクルーズ(レベル)の仕事じゃないですか?
 
それを「短編映画」でやっちゃってるんです。
 
じゃあ、何か裏で大きなバックアップがあったのかというと、そんなものは一切なくて、その映画を作られたご本人からお話を伺ってみると「撮影4日、準備2年」みたいなスケジュールで、その「準備」というのは、おそらく「交渉」がほとんどだと思われます。繋がりも何もないところから「お願いしますっ!お願いしますっ!」をやりまくったのでしょう。
 
短編映画だから、長編映画のように潤沢な予算があるわけじゃないんです。
 
だから「設定勝負」ではあるものの、それだけだと埋もれてしまうから、皆、「ならば俺達はどこで圧倒するか?」ということを考えていて、「お金は無いけど、時間はあるぞ」という方は、「他の皆が時間がかかりすぎて諦める勝負」に打って出るんですね。
 
審査員も観客も、そこにクリエイターの凄みを感じるし、そこに執念と狂気を見るんです。
 
そう考えると、「短編だし、ワンチャン、アイデア勝負でいけるかも」というコスパ思考は、健常者の思考で、「コイツ、とんでもねーな」とはならないんですね。
 
そして、おそらくこれは短編映画に限った話じゃなくて、全てのサービス提供者に言える話で、当然、「面白いアイデア」は必要なのですが、それだけで走り出してしまうのはあまりに危険で、「面白いアイデア」を出したら、次に「自分達は、どこに圧倒的な時間を投下するのか?」という話し合いは必ず挟んだ方がイイと思います。
 
 

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